会社員時代のお話~紙ストロー開発編

こんにちは、石塚あつしです。なぜか最初の記事が消えてしまいましたので、もう一度書き直します。

会社員時代では、17年間「紙」の法人営業をしていました。チラシや出版に使う「印刷用紙」、レシートに使用される感熱紙・物流の送り状に使用される感圧紙・デジタル印刷に使用される「情報用紙」、トイレットペーパーやティッシュペーパー、ペーパータオルやキッチンペーパーなどの「家庭紙」、LDPE・HDPE・LLDPEなどのポリエチレン樹脂やフィルムなどの「化成品」、そしてその他諸々の商材をお客様に販売をしていました。

その傍ら、最終5年間は社会の役に立つものを、新たな価値のある物を世に提供したいと考え、2種類の商品を流通させました。今回はそのうちの最初の一つ「紙ストロー」を紹介します。

時は2017年、海洋プラスチックとりわけプラスチックストローが海ガメの鼻に刺さり、それを取り除く動画が世界中から注目を浴び、プラスチックストローが海洋プラスチック問題の象徴とされていました。

当時、中国の北京支店から印刷が施された紙ストローのサンプルが届き、日本のテーマパークやホテル、カフェに販売をして欲しいという依頼でした。実務の経験上、インク・糊に無害な物はなく何かしら有害物質を含む事を知っていたため、北京支店経由でストローメーカーに安全性について確認を取って貰いました。回答は糊は牛乳のタンパク質から作るカゼイン糊、インクは大豆油を使用したソイインクのため安全で、要望があれば米国FDAに準拠した証明書を発行可能、との事でした。糊は溶剤と防腐剤を必ず使用しますし、牛乳アレルギーにも気を付けなくてはなりません。また、ソイインクは油を大豆油に代替しただけで安全性は通常インクと変わらない事。また米国FDA準拠の証明書のテスト方法は、決まった温度のお湯に決まった時間に漬け、溶け出た成分を検査する方法(溶出試験)でした。子供達はストローを噛みますし、最悪飲み込みますので、咀嚼して飲み込む事を想定した品質設計が必要である事が分かりました。

また、一方でストローは『麦の茎→紙ストロー→プラスチックストロー』と変遷し、高度経済成長期以降に海外生産に移行され、ストレートのプラスチックストローはほぼ海外生産となりました。紙ストローの生産メーカーは淘汰されほぼ日本には無い状況でした。但し、1社埼玉県にあるメーカーが機械を持ち2~3万本/月の生産能力を有していました。またこのメーカーは特殊なコーティング技術でインクや糊を包み込み、ホールドする事で耐水性やインクの染み出し防止が出来るとの事でした。お会いした当時はまだ一般的な糊やインク、紙を使用していたため、出来るだけ安全な部材に変える事、機械の更新や生産環境の改善で生産体制を整える事が必要でした。

そして、紙ストローはプラスチックストローに比べ5~10倍ほどのコスト差がありましたので、私は企業がコストを吸収するには厳しいと考え、納得して消費者が紙ストローを購入する仕掛けを考えました。それは「デジタル印刷×可食インク」により紙ストローにい価値付けをする事でした。例えば、テーマパークで常に数百種類の紙ストローを用意し、また季節によりパターンを変えたり、コンビニではイベント毎に柄を変えたり、時にはクジの役割を与えたり、野球やサッカーやコンサートなどのイベントにその日だけのロゴを入れたり、広告を入れる事で収入を得る事も出来ると考えました。それは特殊なコーティング技術を持って可能となると確信をし、諸々のステップへと進めました。

紙ストローを開発するためには、

①安全な糊の開発 ②安全なインキの開発 ③安全な紙の調達 ④ストロー生産機械の新調

⑤デジタル印刷機械の開発 ⑥コーティング機械の新調 ⑦お客様の囲い込み

⑧紙ストローと紙コップのリサイクルスキームの確立 ⑨各種メーカー、社内外との折衝、仲

間集め ⑩紙ストロー安全性基準に関する情報収集と法令の確認

これらを同時進行で進め、競合他社に先んじて手を打ち続ける必要がありました。

関係各社、社内外の仲間とはよく紙ストローが目指すべき世界やビジョンを明確にし、時には説得をしたりアドバイスを頂戴しつつ、紆余曲折ありましたが最後まで諦めずに最終的な製品を世に送り出す事が出来ました。残念ながら色付の紙ストローは天然の着色料が紙への固着が難しく、上手く出来ませんでしたが、紙ストローメーカーさんが頑張り黒一色は開発が終わり高級レストランで使用をされています。

白いストローはタ〇ーズ直営店、ル〇アール、1〇9シネマズなどで使用されていまして、他社の紙ストローと比べ紙の匂いがしない、耐水性が高いなど高評価を頂いていますので、是非機会ございましたら試して頂ければ幸いです。

この紙ストローの開発を通じて私が学んだ事は

「夢や理想を形にするためには、目指すべき形やビジョンを明確に打ち出し、仲間とよく議論をして根気強く情熱を持って当たれば実現できる」という事でした。

これは政治の世界にも通ずる事だと思っています。

それではまた次回!

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